最新記事

米政治

さようならトランプ、負債3億ドルと数々の訴訟、捜査が待っている

GOODBYE, DONALD TRUMP

2021年1月28日(木)18時45分
スーザン・マシューズ

1月20日の朝、ホワイトハウスを後にするトランプ。同日の新大統領の就任式は欠席した AL DRAGO-BLOOMBERG/GETTY IMAGES

<これまでトランプは、自らの言動の報いを受けることなく、厚顔無恥と違反行為を加速させてきた。だが今回は違う。ニューヨーク州、内国歳入庁、元ポルノ女優と元モデル、ジョージア州......。所業の報いを受ける日が訪れるかもしれない>

(本誌「バイデン 2つの選択」特集より)

ニューヨークのトランプ・タワーのエスカレーターで降りてきて、米大統領選への出馬を宣言──。

驚くべき出来事の連続だったドナルド・トランプ前米大統領時代のなかでも、これほど記憶にこびりついた「トランプ的瞬間」はない。

忘れられないのは、ばかげたメッセージに満ちていたから。醜悪な要塞の頂上から、エスカレーターという本質的に滑稽な移動手段でトランプ様が降臨する、と。

最近になって映像を見直したとき、あることに気付いた。この瞬間がこれほど印象的なのは、エスカレーターがトランプという人物の究極のシンボルだからかもしれない。
20210202issue_cover200.jpg
エスカレーターは贅沢な装置のはずだが、作り物だらけのショッピングモールを想起させる。大統領選への立候補を発表するときは、走って演壇に向かうとか、ある種の興奮を身体的に表現すべきだと考えるものではないか。だがトランプは無表情の妻の後ろに突っ立って、動く階段に運ばれていく。

トランプはこれまでずっと、エスカレーターに乗って生きてきた。自身の名前とカネ、父親の力で運ばれてきた。

大学や名門ビジネススクールに入学できたのも(姪のメアリー・トランプによれば、トランプは大学受験の際に替え玉を雇った)不動産王になったのも、どんな女性も自分の思いどおりにできると考えるようになったのもそのせいだ。

トランプの病的な性格は前進の駆動力になってきた。自らの言動の報いを受けることはなく、そのせいで自分は無敵だと確信し、それが厚顔無恥と違反行為を加速させた。

1989年の白人女性レイプ事件で、誤って犯人とされた有色人種青年5人の死刑を求めても、責任は取らずに済んだ。

だからさらに突っ込んで、バラク・オバマ元米大統領はアメリカ生まれではないと主張し、白人至上主義者と抗議デモ参加者が衝突した事件について「どちらの側にも立派な人々がいる」と発言した。

複数回の破産を戦略的武器に変え、税金逃れの手段として利用し、ビジネスの達人という触れ込みで詐欺商法の「トランプ大学」に受講生を集めた。政府という概念そのものに傷を付けながら、米政府のトップの座を勝ち取った。

【関連記事】バイデン、トランプから「非常に寛大な」手紙受け取る

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米貿易赤字、3月は0.1%減の694億ドル 輸出入

ワールド

ウクライナ戦争すぐに終結の公算小さい=米国家情報長

ワールド

ロシア、北朝鮮に石油精製品を輸出 制裁違反の規模か

ワールド

OPECプラス、減産延長の可能性 正式協議はまだ=
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国の研究チームが開発した「第3のダイヤモンド合成法」の意義とは?

  • 2

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロシア空軍基地の被害規模

  • 3

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 4

    「500万ドルの最新鋭レーダー」を爆破...劇的瞬間を…

  • 5

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉…

  • 6

    ロシア軍の拠点に、ウクライナ軍FPVドローンが突入..…

  • 7

    「複雑で自由で多様」...日本アニメがこれからも世界…

  • 8

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 9

    中国のコモディティ爆買い続く、 最終兵器「人民元切…

  • 10

    「みっともない!」 中東を訪問したプーチンとドイツ…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 5

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 6

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 7

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロ…

  • 8

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 9

    ウクライナ軍ブラッドレー歩兵戦闘車の強力な射撃を…

  • 10

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 6

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 7

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 10

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中